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トダナノオク
別にそれほど良いものでもないし、どうしても欲しいものじゃなく……戸棚の奥に残ってたお菓子のような、そんなスタンスの漫画やイラストを。

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東方密室 第四章

 格納します!
四章

 幻想郷には科学捜査など存在しない。
ステルススーツはあるが、科学的な見地に立った捜査というものは存在しないのだ。別に不思議なことではない。単に河童の興味を惹かないだけだ。
 だからこそ、火星運河は探偵であり、そして彼女は旧時代的な推理を振るうのだ。それは推理と呼ぶよりは飛躍的な連想と言うに相応しいのかもしれない。風が吹いた事で桶屋が儲るとすれば、その一連の事象に誰よりも早く頷くのは旧時代の名探偵であろう。
「慧音先生の寺子屋から大事な本が盗まれた……総てはここから連想する他ないのだよ」
 文々丸の仲間達の群れが垂らしたブランコの椅子に腰掛けたまま、運河はニヤリと笑って人差し指を立てて見せた。暮れかかった夕日を背に烏に吊られた運河はまるで、妖怪漫画の主人公さながらだ。ちなみに阿求は軽いので文が抱えて翔んでいる。
「本を盗む……ということは、本の価値とその存在を知っている必要とがある。第二に大事というからには、そうホイホイと人目に触れるような類いのものではないということも頭にいれておいてもらいたいね」
 取材相手にはこの上なく愛想の良い文はしきりに頷き、運河の推理に感心しきりですというポーズをアピールしている。阿求はそんな文のポーズの度にガクガクと揺らされて、少々顔色が優れない。乗り物酔いをしているのだ。
「そう考えれば、自ずと容疑者は絞られてこようさ」
「いやいや、それだけの材料で推理を組み立てるなど、たかがブンヤの私にはとてもとても……」
 阿求を提げてなければ、もれなく揉み手のオプションが付きそうな文に運河は嘆息しつつ、
「ふん。見え透いたお前の世辞などいらん……それより、あっきゅん大丈夫かい?」
「大丈夫だよ……まだ……」
 余り大丈夫とも思えない運河であったが、今は阿求の辛抱強さに期待する他なく、話を再開させた。
「大事な本は当然それなりの場所に保管されていよう。慧音先生の書斎なんか妥当なとこだろうね。そしてそんな場所に踏み込める人間は、古書店くらいなものだろうさ」
 人間の里に一軒だけ、軒を構える店がある。とは言え、幻想郷において平凡な人間が切り盛りをする店の本棚などたかが知れているが。
「じゃあ、古書店主が犯人ですか?」
 飛び付く文に、満更でもないといった顔で運河は指を振る。
「ちっちっち。甘いな、ブンヤ。それではいかんせん安直が過ぎる。仮に古書店主が犯人なら、真っ先に疑われるくらい馬鹿でも想像が付くさ。まぁ仮に、高飛びでもしたのなら追跡捜査も辞さんが、生憎と人間の里にある古書店がいきなり閉店セールを始めたなんて話は聞かん。また、古書店主が人を使って盗ませたという線も潰しておこう」
「何でですか?」
「簡単なことだ。幻想郷の古書店など、人に犯罪を委託出来るほど裕福ではないからな」
「人を動かすのはお金だけじゃないですよ~運河探偵」
 悪どい顔をして口の端をつり上げる文を運河は半眼で睨むと、
「まぁ、そうだな。ブンヤみたいに人の弱みを嗅ぎ回る趣味のある店主かもしれん」
「それは探偵もお互い様では?」
 明らかな挑発をいつもの調子で買ってやろうとも思ったが、運河もここは冷静さを持ち直した。いかんせん空中戦は部が悪い。目的地に着いたら小突いてやる、と。
「えー、黙れブンヤ。ともかくだ、どちらにせよ古書店主はシロだ。そんな苦労までして古書店主が慧音先生も無くして慌てるほどの稀少本を手に入れたとして、その後はどうするんだ?」
「そりゃ、売るんじゃないですか?」
「盗品をか?」
「あ……」
「まぁ、自分自身の蒐集品に加えたり、店頭に並べる以外の手段で捌くって線もあるがな……」
 口では挙げてみるものの、運河はその可能性には何パーセントも期待してはいなかった。能力だ、彼女に宿る真実を見抜く程度の力がそれをミスリードだと耳打ちするのだ。
「なら、古書店は無関係ですか?」
「いや、情報の出所であることには違いあるまい」
「ふむふむ。となると、怪しいのはお客ですね」
 敵ながら良い線をついて来る……などと、運河は口が裂けても言いはしない。別に、変な虚栄心が讃美を喉奥に押し止どめているのではない。単に妥当なだけだ。店主がシロなら、その次に客へ疑念を向けるのは常套過ぎる。
「だが、あの古書店は善くも悪くも普通の古書店だ。たまにこれはと思っても、抜き出してみれば慧音先生のお古なんてのはザラだ」
「だから、お客も普通だと?」
「来る客総てがそうだとは言わんさ。ただ、常連ともなれば店に釣り合う平凡な客だろうな」
 自分の欲しいものがない店にあしげ良く通う人間はいないだろう。
「じゃあ、犯人は一見さんで尚且つ店主がついうっかり口を滑らした話を耳にした……なんて、幸運を貼り合わせたようなやつだと? それじゃ捜し様がないですよ」
「結論に急ぐのはブンヤの悪い癖だな」
「あやややや。結論に腰を据え過ぎて犠牲者を増やす探偵よりはマシかと」
 またも罵倒の応酬かと思われたが、身構えていた文も肩透かしを食らうほど、運河は口だけで薄く笑い、
「ふん……そうさな。探偵の、何と無力なことか」
「運河ちゃん……」
 それまで黙りこくっていた阿求が弱々しくも声を上げる。まだ戻してはいない。
「大丈夫かい、あっきゅん?もう少しの辛抱だからね」
「ということは、犯人のお宅はここら辺で?」
 運河に促されるまま羽ばたいていた文が、下界をキョロキョロと見渡した。人里と言われ翔んでは来たものの、そこは中心部からは遥かに離れた小さな集落であった。古書店も通り過ぎている。
「幻想郷に住まう人間の誰もが、ここを快く思っている訳ではない……」
 運河は烏達に下降を指示する。徐々に大きくなっていくその集落は、近付いてみてもやはり辺鄙で寂れた印象に変わりはない。
「この集落はな、博麗大結界を消滅せんとする過激派の連中が集まった集落だ……ま、追いやられたと言った方が齟齬なしかね」
 言うなればテロリストの村みたいなものであるが、そんな物騒な連中がこうしてのうのうと暮らしていられるのも、ひとえに彼らが無害な存在の域を脱せられぬ無力さ故である。本当に結界を脅かすほど強大な力を持っていれば、こんな村落など八雲紫辺りがかき消しているだろう。
「ま、だからこそ慧音先生は焦ったのだろうね」
 内密に、だがチマチマと調べていれば、本当に結界を脅かしかねない事態へと発展する。しかし余りに手広く助けを求めれば、結界の代わりにこの村が消滅……などという惨事にも繋がり兼ねない。
 もしやすれば、と運河は思う。本を盗んだ犯人もまた同じことを考え行動を取ったのではあるまいか。そうすれば彼女の視た真実の断片とも無理なくピースを嵌め合わせられる。大手を振って盗みを働けば、幻想郷に掃いて捨てるほどいる実力者との衝突は避けられない。だから、この村落の人間を唆し……
「さぁ着いたぞ、ブンヤ。この村に犯人はいる」
 言うが早いか、運河は烏のブランコから飛び下りると地面を蹴って駆け出していた。
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プロフィール

F田

Author:F田
出生:19XX年 3月23日
北海道・札幌の南方に寄生している学生。
友達やら漫画やらに感化されやすく、東方もその口だったりする(アイコンもまさにソレ)

もっぱら絵を描く事が生きがいなのだが、剣道部員だったのに腕が弱く、すぐに腱鞘炎になるのが悩みの種

メールアドレスですよ
tenkahubu800(´・ω・)yahoo.co.jp
(´・ω・)を@に変えてくださいな。

当たり前ですが、リンクフリーです。勝手にやっちゃってください。でも、連絡をくれたら助かります。

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