トダナノオク
別にそれほど良いものでもないし、どうしても欲しいものじゃなく……戸棚の奥に残ってたお菓子のような、そんなスタンスの漫画やイラストを。

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

妖怪荘へようこそ!

原作・F田
文・南皆星達

第一回「風が来る!」

夏です。梅雨です。台風です。
 我ながら何ともネガティブな風物詩を列挙したものですが、こんなボロい……いやいや、クラシカルな下宿屋に住んでいると思考にもカビが生えて……いえいえ、現実的になってくるんでしょうか? ちょっとした疑問です。
 とは言え、その程度のことでいちいち首を傾げていては、この下宿屋ではムチウチになってしまうかもしれません。何と言っても全てにおいて想定外な下宿屋です。
何が想定外かと言えば、まず管理人さんが妖怪さんでいらっしゃいます。俗に言う砂かけ婆でいらっしゃいますが、管理人さんはとてもお綺麗な方です。普段は着物を着てらっしゃいますが、とてもよくお似合いです。背中まで伸ばされた髪とメガネがとても理智的な印象を与えています。
決して、口が裂けても、あ……私は血とか出るスプラッタ系は嫌いなんで本当に口を裂かれたりした場合は別ですけど、まぁご本人の前では絶対に言えません。常に携えてるホウキが唸りを上げるでしょう。
 何でも親戚のお婆さんもアパートを経営なされているそうで、大変な資産家なのかと思い、一度訊いてみたことがあるのですが、
「妖怪相手じゃ、ボランティアみたいなもんだね……どいつもこいつも無職だから」
 とおっしゃっておりました。妖怪の方々は病気も何にもないけれど、収入源もないのですから良いことばかりではないのだなぁと改めて思ったものです。
 さて。管理人さんも妖怪ですから、当然ながら店子も妖怪です。これで下宿も妖怪だったりすれば良いんですが、世の中そうそう上手くもいかないもので、ラップ音でにぎやかだったりシャンプーしてるとどなたか後ろに立ってくれてたり、誰もいない部屋で明かりが灯ったりとする割に、その実、外見通りのボロ……クラシックな下宿であり、私は今こうして台風に備えてテンツクテンツクと窓という窓をベニヤ板で塞ぐという地道な作業に従事しております。朝、管理人さんに叩き起こされてからずっとしているので、大工の棟梁でも流石に休憩するだろうという時間になっていると思うのですが、何しろこの店子総出の台風対策を指揮されているのが妖怪である管理人さんですので、私のような極々一般的な人間とは疲労という概念が違うのでしょう。
そう、言うならば文化の違いです。今や世界はグローバルです。他文化を理解出来る広い心がこの狭い世界において求められる時代ですから、妖怪の方々がもってらっしゃる生活スタイルや思考だって、理解出来なくてはならないでしょう。少なくとも私はそう考えます。そう言い聞かせます。そう自分を騙します。そう自分を欺き……
「あの。管理人さん……」
「ん。どしたの? 山田クン。手が止まってるわよ」
「いえ、その。管理人さんとの会話を優先するために、敢えて止めました」
「あっそ。じゃあさっさと用件済ませて、すぐにまた手を動かすのよ? いい?」
「……いやあの、出来れば会話を済ませたあともしばらくは手を止めていたいという用件なのですが」
「なんで?」
「……管理人さん。少し視線を拝借してもよろしいですか? あの柱をご覧下さい」
「見たわよ。別に普通の逆柱が憑いてる柱じゃないの」
 また未知の単語が飛び出してきました。逆柱……まぁ十中八九、怪異絡みの単語なんでしょうが、気になる性分ですので後で水木先生の妖怪大図鑑で調べてみましょう。まぁ、それは後でいいとして、
「いえ、見て頂きたいのは柱ではなくてですね。そこにかかっている時計です」
「あ~山田クンが買ってきた壁掛け時計ね。この下宿で時間なんか気にするの君だけだよ? まぁ人間だもん。仕方ないか」
 ケラケラと笑われる横顔は、とても何百年も生きていらっしゃるとは思えないほどお美しい方です。いえ、まぁそれも今はいいとして、
「そうです。私は人間なんで、割と時間には細かいんです。ですから作業を開始してから、時計の針が八回ほど回っているのも恐らく私の見間違いではないと思います」
「そう」
「ええ」
「で……?」
 これは迂闊でした。
 確かに何百年も生きてらっしゃる方に八時間程度の労働に不満を申し出るのは、もしかしたらカップラーメンの出来上がりが遅すぎると日清さんにクレームを入れるに等しいのかもしれません。
 いやしかし。先ほどから金槌を持つ手が小刻みにビートを刻んでいるのを見過ごすことも出来ません。恐らく私の身体が「すみません。勘弁してください」と泣いているのでしょう。この声なき訴えを黙殺するほど私は自分に対して非情になれません。
「すみません。勘弁してください。平たく言って疲れました」
「え? あ、あー……疲れるんだよね、人間って」
「はい。あと、泣きたくなります」
「案外、不便なもんね。山田クンも妖化しちゃえば? 何かそういう邸、あるらしいよ?」
 謹んで、辞退させて頂きます。
「あ、そう? まぁ、大の男にぴーぴー泣かれたんじゃ敵わないから山田クンは少し休憩して良いよ。その間、さっちんコキ使うから」
「え、いやそれは……」
 さっちんちゃんは、私と同じく店子さんです。この子も普段から着物を着ていて、紅い着物がとても可愛らしいです。もし私がこの子の親ならば成長が楽しみで毎日フィルム一本くらいを費やしてシャッターを切ってしまうかもしれません。
やっぱりこの子も妖怪で、俗に言う座敷わらしをしている子です。外見年齢ではどう考えても私より若い……というより、はるかに幼い女の子ですが、やはり妖怪ですので正確に言えば私よりは果てしなく年上です。ですが……
「ビジュアル的になんか、抵抗があります」
「いいじゃん、別に。あの子だって、立派な妖怪だし」
 小学生くらいの女の子に労働を押し付けて安息を得ることに抵抗を覚えるなという方が難しい気がします。とんだウチ弁慶ならぬ下宿弁慶です。しかし、そんな私の人間的感傷を気にも留めず、管理人さんは、
「おーい! さっちん! ちょっとこっち来ておくれ」
「はあい」
 吹き抜けになっている階下に二階からさっちんちゃんの元気な返事がしました。続いてトテトテと階段を踏み鳴らす小さな足音が……トテトテトテドテ……ドテ?
「だ、大丈夫? さっちんちゃん」
「えへへ。大丈夫だよ、お兄ちゃん。ちょっと転んじゃった」
 健気です。鼻をぶつけてしまい、少し涙目なのが尚のこと健気です。私は別に世間様に後ろ指さされるような趣味を持ち合わせてはいませんが、思わず胸を打たれます。転んだ拍子にばら撒いた釘やら板やら踏み台(背が低いので窓まで届かないようです)を一緒に拾っていると、
「さっちん。何か山田クン疲れてもうこんなメンドクサイ仕事なんかかったるくてやってられねーよって言うから、後はさっちん一人で頑張ってもらえる?」
「うん! あたし頑張るから、お兄ちゃんは休んでてもだいじょーぶ――」
「もう少し頑張らせて頂きます。管理人さん」
 もう、そりゃあ即答です。
「うんうん。若者はそうでないとね」
「そーそー。若い男は元気だけが取り柄なんだしねー」
 そうです。私の取り柄なんて……と、素直に頷こうとした私の頭がピタリと止まります。何やらあり得ない場所から声が聞こえました。あり得ない場所……それは応接ロビーに誂えられたソファの方から……
「ね、猫娘さん。そこで何してるんですか……?」
「ん~」
 猫娘さんもこの下宿の店子で、例外なく妖怪です。説明する必要もなく、そのまんま猫娘をされています。この人は名前のまんま外見年齢も正しく娘で、私とあくまで外見年齢は近しく見えるので割と仲良くして貰っていますし、普段はとても良い人(?)ですが……
「ん~昼寝かな~」

youkoso! 01


 ソファの上でゴロゴロしつつ、一言。え? 今、何ておっしゃいましたか?
「いや、だから昼寝だってば。山田~耳が遠くなるにはまだ早いんじゃないの~にゃはははw」
「にゃはは、じゃないですよ! 何、一人だけくつろいでるんですか? さっちんちゃんだって頑張ってるって言うのに……」
「お~頑張れよ、さっちん。頑張りやさんは良いお嫁さんになれるぞ~」
「うん! あたし頑張るよ、おねーちゃん」
 健気です。いや、今はそうじゃなくて……
「猫娘さんも手伝って下さいよ。ただでさえ人手が足りなくって、まさに……」
「猫の手も借りたいってか?」
「そ、そうですよ!」
「ハッ! ばっかじゃねぇの?」
 ですが……時折、とてもムカつきます。
「こちとら肉球だっての~」
 はい、それは嘘。
「猫。アンタね……ろくに家賃も払ってないんだから、こういう時にカラダで払いな」
「や~だ~婆ったら、カラダだなんてや~らし~。にゃははははw」
 確かに猫娘さんなら、やらしい意味でもカラダで家賃を支払えそうな気がします……いやいや、そうじゃなくて! 今、禁句を……!
「だれが……」
「はわわわわわわわ」
「さっちんちゃん! まずいよ、避難しないと――」
「婆だああああああああああああ!!」

 ………………
 …………
 ……
 皆さんは砂太鼓というものをご存知でしょうか?
 いえ。知らない方はとても幸せな方です。知らないままの方がよろしいでしょう。
 ただどんなものか端的に言うならば……
 目を開けた瞬間、鳥取砂丘に瞬間移動したかと思いました。
 
 そう言えば、下宿の紹介がまだでした。
 ここは一人の人間とその他大勢の妖怪の方々がごく普通に生活をしている下宿『妖怪荘』と言います。今は、応接ロビーが砂場になってしまっていますが……まぁ、住めば都の我が家です。神経の図太い私もたまに人恋しくなる今日この頃、貴方も一度下宿されてみてはいかがでしょう……

洗足邸の住人たち。に感化され、オマージュという盾でパクリという攻撃を回避しつつ、第一話をアップしました。
文字の部門は『SAS之会』の南皆星達さんに書いてもらいました。
話がちょっと前の話題ですが、そこはご愛嬌でお願いいたします。
これから、ちょくちょく稚拙な漫画的なモノをアップしていきたいと思っています。
スポンサーサイト

プロフィール

F田

Author:F田
出生:19XX年 3月23日
北海道・札幌の南方に寄生している学生。
友達やら漫画やらに感化されやすく、東方もその口だったりする(アイコンもまさにソレ)

もっぱら絵を描く事が生きがいなのだが、剣道部員だったのに腕が弱く、すぐに腱鞘炎になるのが悩みの種

メールアドレスですよ
tenkahubu800(´・ω・)yahoo.co.jp
(´・ω・)を@に変えてくださいな。

当たり前ですが、リンクフリーです。勝手にやっちゃってください。でも、連絡をくれたら助かります。

最近の記事

最近のコメント

最近のトラックバック

月別アーカイブ

カテゴリー

FC2カウンター

ブロとも申請フォーム

ブログ内検索

RSSフィード

リンク

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。